「十夜助けて!煌が追いかけてくる!」
やっと追いつき、腕を引いて助けを求めると、
「俺が近付いたら嫌なんだろ?煌と遊んでこいよ」
十夜は横目でチラリと見るだけで助けてはくれなかった。
な、なんで……!?
見るからに機嫌が悪い十夜さん。
冷ややかな視線もそうだけど、口調なんてほぼ投げやりで。
終いには立ち止まる事もせず先に行ってしまった。
「ちょ……!十夜!」
待ってよ、と叫ぶけど知らんふり。
あたしの呼び掛けなんてお構いなしに歩いていく。
……怒ってる。明らかに怒ってる。
あの口調、あの目。
絶対怒ってるって!
っていうかなんで怒ってんの!?
「やーい、振られてやんのー」
「ちょ、暑っ苦しい!」
気配無く突然湧いて出た煌。
気付いた時にはもうガシッと肩を組まれていて。
「俺を無視するからだよ、バーカ」
「……ぅぎゃぁぁぁ!!」
耳にフッと生暖かい吐息を吹き掛けられた。
し、信じらんない!耳に息吹き掛けられた!
「何すんの馬鹿煌ー!!」
「別にー?ただ息吹き掛けただけだけど?」
「……っ」
だから、耳元で喋んないでってば!
煌が喋る度全身がゾワゾワしてむず痒い。
「凛音ちゃんは頭だけじゃなく耳も弱いんですね~」
「はぁ?」
頭が弱い!?
顔は見えずともその軽い口調で馬鹿にされているのが分かり、怒りのバロメーターがMAXに。
あぁ、もう!
コイツはいつもいつも憎たらしいんだから!!