「俺は凛音ちゃんとやりたくないなぁ。いくら強くても凛音ちゃんは殴れないから」


「まぁ、アイツを本気で殴れねぇわな。……ってかアイツ、今一本背負いしたぞ?柔道もすんのかよ……」


呆れたように溜め息を吐き出す煌。


「アイツの喧嘩は何でもアリだよ。柔道、空手、ボクシング、合気道、プロレス、あと、レスリングとか少林寺拳法、剣道なんかもかじってるな」


「ゲッ、マジでか」


貴音の言葉に闘志を燃やしていた陽の表情が曇る。


「それ、お前が教えてんの?」


彼方が貴音にそう聞くと、貴音は「まさか」と苦笑。


「凛音に教えたのはここの連中だよ。あそこに転がってる慎は空手やってるし、今相手してる透は合気道とボクシング。砂月は確か剣道だったな。まぁ主に教えてたのは先代達だけど」


「先代達面白がってたもんね。優音と凛音に教えるの」


嵐と時人はその時の事を思い出しているのか、凛音と優音を交互に見て笑っている。


笑われている本人、優音は不満げに眉を寄せ、「あの人達はスパルタ過ぎんだよ」と拗ね口調でそう漏らした。


唇を尖らせている優音の頭にポンッと手を乗せた貴音は、凛音を見つめながらゆっくりと口を開く。



「“アレ”を見たら分かると思うけど、凛音の戦闘スタイルは独特だ。

力が無い分、技で倒そうとする。統一性が無いんだよ。何の技が飛び出してくるのか予想もつかない。独自のステップで様々な技を繰り出し、相手を確実に仕留める。

正直俺はやりにくいな。一番闘いたくないタイプだ」