-客観的視点-



「──オイオイ。兄ちゃんいいのかよ。愛しの妹チャンが喧嘩してんぜ?」


「問題無い。あれはじゃれ合ってるだけだ」



獅鷹幹部、そして鳳皇幹部が部屋から出て見たモノ。


それは凛音の“遊んでいる姿”だった。


今、凛音が遊んでいるのは透と砂月。

そして、新入りの計三人。


トップバッターの慎はというと、四人から少し離れた所で仰向けになって転がっていた。


服は乱れ、汗でベトベト。


その様子から察するに、慎が先に降参の旗を揚げたのだろう。


「慎の奴また凛音にやられたのかよ。根性ねぇな」


廊下の手摺りに両腕を掛け、慎を見下ろしながら愉快に笑う嵐。


「本当に勿体無いよね。凛音が男なら幹部間違いナシなのに」


「……アイツは無駄に強すぎんだよ」


時人の言葉に遊大が不満げにそう零す。



視線の先には遊んでいる凛音の姿。

その姿は可憐にして優美。


舞うように繰り出される手足は喧嘩をしているようには見えない。


「……クッ」


力は弱いが、人よりも圧倒的に多い手数。


独特の喧嘩スタイルにほとんどの者は翻弄される。


「まさかアイツがあんなに強かったなんてな……」


「……俺、りっちゃんに勝てる気しねぇー」


「俺は勝つ!」


嵐と同様、手摺りへ凭れた煌と彼方がしみじみとそう言い放ち、それを聞いた陽が一人闘志を燃やしていた。