「神様、ありがとう……」


そっと目を開け、天に居るであろう神様に感謝の気持ちを込めて呟く。


本当に、ありがとう。


一度だけでは足りなくて、心の中で何度も何度も神様にお礼を言った。


その間、視線はずっと白い月に向けられたまま。


星達と共に輝く白い満月を見て、ふと“あの時”の事を思い出した。


そう言えば、十夜と初めて出逢った日も綺麗な満月だったなぁ……。



ブランコにつられて入った公園で、今みたいにブランコに揺られながら満月を見ていた。


慣れない土地に不安を抱きながらも楽しい高校生活を夢見ていたあの頃。


まさかあの後とんでもない事に巻き込まれるなんて思いもしなかった。


今思えば、十夜のあの“一言”が全ての始まりだったのかもしれない。


こんな風に月を見上げていた時、突然言葉を投げ掛けられたんだ。




「──凛音」





「……十、夜?」


声がした方へ振り向くと、そこにはこちらに向かって歩いてくる十夜の姿があった。


サラサラの黒髪が夜風に靡かれ、前髪の隙間から漆黒の瞳が見栄隠れしている。


……あれ?


十夜のその姿を見た瞬間、脳裏に出逢った時の情景がフラッシュバックした。


「寝れないのか?」


けど、十夜のその言葉にすぐに引き戻された。


きっと、出逢った時の事を思い出していたから脳が錯覚したのかもしれない。


「……うん、眠れなくて。十夜はどうしたの?」


「俺も似たようなモン。窓からお前の姿が見えたから来た」


「そっか……」


近寄ってきた十夜は何故かベンチには座らず、あたしの目の前に立った。


優しげな漆黒の瞳があたしを見下ろす。