素頓狂な声を上げた当事者達は一斉に声がした方へと振り返る。


視線の先には……。


「ククク……」


口元を押さえ、肩を震わせて笑っている貴音の姿があった。


「貴兄……?」


当事者達には貴音が何故笑っているのかさっぱり理解出来ない。


「ククク……あー、ヤベェ。ツボるわー」


若干涙目になっている貴音はおもむろに顔を上げると、十夜を見てまたプッと吹き出した。


「………」

「そんなに睨むなよ、桐谷」

「え、十夜?」


貴音の言葉で全員が十夜を見る。


「何でそんな顔恐いの?」


凛音の言葉通り、十夜の表情はかなり険しかった。


そしてオーラがコワイ。


眉間の深い縦皺が十夜の不機嫌さを物語っている。


「ちょ……、俺は何もしてないからな!?引っ越し手伝った時にちょっと見ただけだ!」


鋭い視線を向けられた遊大は即座に否定。


その慌てぶりは尋常ではなかった。


手だけではなく、同時に頭まで激しく左右に振っている。


「桐谷、お前ってそんな面白キャラだったっけ?案外人間らしいとこもあるんだな」


「……うるせぇ」


「……プッ」


「………」


「悪ぃ悪ぃ。そんな怒んなって」



更に深く刻まれる十夜の眉間の皺。


それを見て貴音は焦り混じりに笑い、謝罪する。


これ以上弄ると今後に差し支えると思ったからだ。