-客観的視点-
「流石だな」
凛音がリビングから出て行って数秒経った頃、見計らったかのようにそう発したのは煌で。
口元に浮かべられた小さな笑みは貴音へと向けられている。
その笑みに応えるようにフッと口元を緩めた貴音は、ゆっくりと背凭れに背中を預けると足と腕を同時に組んだ。
「アイツには聞かせられない話だからな」
その言葉と共に伏せられた瞳。
再び開いた時には両メンバーへと向けられていた。
“アイツには聞かせられない話だからな”
そう。
貴音が凛音に“風呂へ行け”といったのはわざとだった。
じゃあ、何故そう言ったのか。
それは、凛音がいると出来ない話があったから。
凛音には聞かれてはいけない話。
鳳皇を家に呼んだのもその話をする為だった。
けれど、その話をする為には凛音をリビングから遠ざける必要があった。
だから“風呂に入ってこい”と言ったのだ。
貴音は鳳皇を家に呼ぶと決めた時点で凛音を風呂へと誘導すると決めていた。
けれど、考えていた誘導方法はもっと苦しい理由。
凛音がジュースを零してくれたお陰でその苦しい理由を使わなくてよくなり、貴音は安堵していた。
「それにしても、お前等が俺等と同じ策を練っていたとはな」
フッと笑みを浮かべた貴音が片目を細め、鳳皇に向かってそう言い放つ。
「よく言うぜ。俺等を手の上で転がしてたくせに」
同様に煌も笑みを浮かべながら身体を起こし、右膝に肘をついた。
拳の上に顎を乗せ、そうだろう?とでも言いたげに首を傾げる。
「俺は最良の選択をしただけだ」
そう言った貴音の瞳には後悔の陰。
その陰りが何を意味しているのか、それに気付かない者などいなかった。


