「そうか」
フッと緩められた口元。
満足げとも言えるその微笑みはあまりにも優しくて、胸の奥からじわりと何とも言えない気持ちが込み上げてきた。
……貴兄、ありがとう。
本当にありがとう。
いつもあたしの事を考えてくれてありがとう。
許してくれて、ありがとう。
伝えたい言葉は数えきれない程沢山あるのに、どれも言葉になって出てこない。
少しのもどかしさが心を支配して。
どうにかしてこの想いを伝えたいと思った。
ソファーの上に膝立ちになり、覆い被さるように貴兄を抱き締める。
「……凛音?」
突然の行動に驚いたのか、貴兄の不思議そうな声が届いた。
返事の代わりにギュッと腕の力を強めると、
「……あぁ。分かってる」
数秒ほど間を置いて、低く心地好い声が響いた。
それと同時に、背中の上でポンポンと貴兄の大きな手が優しく跳ねる。
「時々帰って来ねぇと連れ戻すからな」
「……え?」
不意に聞こえた声に顔を上げると、目の前にはソファーに深く腰掛けた優音の姿があって。
眉間には深い縦皺が刻まれている。
「優音?」
恐る恐る呼びかけてみると、おもむろに向けられたのは不満げな視線。
「返事は?」
そして、拗ねたような口調。
それを聞いたあたしは途端に余裕が湧いてきて、そっと優音に向かって手を伸ばした。
袖を引っ張ると優音はおもむろに身体を起こし、ジッとあたしを見据える。
そんな優音にふふっと笑みを零すと貴兄に抱きついたまま優音の首に両腕を回した。


