「見せる?」
って、何を?
「コレ、お前に見せた方が安心するかと思って凌に持ってきて貰ったんだよ」
ホラ、と言われ差し出されたのはさっき凌が貴兄に渡していた茶封筒。
ノートサイズのそれはびっくりする程軽く、中に何も入っていないかのように感じた。
糊付けされていない封筒に手を入れ、そっと中の紙を取り出す。
「これ……」
紙に書かれた文字を見た瞬間、思わず目を見開いた。
“在籍証明書”
それは、真紀さんに渡した筈の転入手続きの書類だった。
「なんで……?」
この書類は真紀さんの手から転入する学校に渡してくれるって言ってたのに。
「お前は鳳皇に戻ったんだ。転校する必要はないだろう?」
「貴兄……」
敵わないと思った。
ホント、貴兄には敵わない。
だって、これが此処にあるって事はだいぶ前から真紀さんに言ってくれてたって事でしょ?
今はもう八月下旬。
二学期から転校するなら、この書類はもう転入先に受理されている筈だ。
だから、転校だけはもうどうしようもないと思ってたのに。
「いつ?」
いつこの書類の事を真紀さんに言ってたの?
「中田とDを潰そうと決めた時。
けど、最終的にどうなるか分からなかったから転校するかどうかはお前に判断させようと思っていた。転入先は真紀さんの知り合いだから融通がきく。
けど、もうギリギリだ。どうする?」
「……っ」
聞かなくてもあたしの答えなんて分かっているくせに。
それでも問いかけてくれるのはきっと貴兄なりの優しさなんだ。
「……転校、しない。一緒にいる。
皆と一緒にいたい!」
自分の意思で転校しないと、自分の口から鳳皇に伝えろ。
貴兄の穏やかな瞳がそう言っているような気がした。


