「……いくら考えても答えは出ない、か。
桐谷、こっちでも調べるからそっちでも調べてみてくれ」
「あぁ、分かった」
顔を上げた貴兄は十夜に向かってそう言うと、チラッと慧くんに視線を向けた。
その視線に気付いた慧くんは小さく頷く。
情報収集は慧くんの仕事。
この話し合いの後、慧くんは得意のパソコンでDについて調べるのだろう。
けれど、今まで調べて出てこなかった情報がそう簡単に出てくるのだろうか。
奴等も今回の事で警戒を強めた筈。
一筋縄ではいかないだろう。
「……で?その後どうなったんだ?」
「その後?」
「何かあったって言ってただろ?」
「あぁ!そうそう、その後だよ!壱さんの綺麗な顔が汚されたのは!」
「は?」
目が点になる貴兄とは反対に、メラメラと怒りを燃えたぎらせるあたし。
あーもう、思い出しただけでも腹が立つ!
「アイツ等壱さんを粉まみれにしやがって~」
「凛音ちゃん!」
拳を震わせるあたしを見て、恥ずかしそうに顔を赤らめる壱さん。
慌てる姿も格好良いだなんてホント罪な男だよね、壱さんは。
「りっちゃんりっちゃん。俺も粉まみれになったんだけど」
「彼方はいいのよ、彼方は。粉まみれでも十分格好良いから」
「え、そうかなー」
「多分」
「え?」
「ううん、なんもない」
適当に言った言葉を馬鹿正直に信じている彼方。
喜んでいる姿が何とも痛々しい。
最後に言った“多分”が聞こえてなくて本当に良かった。
聞かれてたら後々面倒臭いもんね。


