「車を飛び出した時にはもう男はいなくて。急いで倉庫に向かったら中田が男達と喧嘩してた」
「喧嘩?」
「うん……って言うよりリンチに近かったけど。十人はいたから」
「……成る程な。
裏切った、と言うより役に立たなかった事への怒りか……」
ハッ。奴等のやりそうなこった。
馬鹿にするように鼻で笑った嵐ちゃんは、前屈みになっていた上半身をゆっくりとソファーへ沈ませた。
「まさかトップが逃げてたなんてな」
「それだけじゃない。奴等は俺等の前に姿を現した」
「……なんだと?」
静かにそう告げた十夜に貴兄が怪訝な視線を向ける。
「倉庫の入口にいた奴が“D”だったんだ。奴等は三人いた」
「三人……?それは幹部を含めてって事か?」
遊大が十夜に問いかける。
「分からない。あの三人がトップなのか、それともまだいるのか……」
その問いかけに答えたのは十夜ではなくあたし。
「………」
遊大はあたしの言葉に少し俯き、考えるようにこめかみに手を添えた。
他の獅鷹メンバーも口を一文字に結び、気難しい表情を浮かべている。
「あたし、奴等に聞いたの。“目的は何?”って」
「そしたら?」
「“腰抜けの後始末”と“獅鷹と鳳皇を潰すこと”って」
「あぁ゙?」
問いかけにきた遊大にそう返すと、その返事は遊大ではなく嵐ちゃんから返ってきた。
何故かあたしを睨む嵐ちゃん。
怖すぎるっつーの!
今にも殴られそうなその形相に取り敢えず目を逸らしておいた。


