「あれ?フーコは?」
貴兄の隣に腰を下ろしながら時人くんを見ると、いつも時人くんと一緒にいる筈のフーコがどこにも見当たらない。
「あ、凛音ちゃん、その子ならここにいるよ!」
「へ?」
「フーコちゃんって言うの?可愛いね」
壱さんの方へ振り返ると、壱さんの膝に乗っているフーコとそのフーコに笑いかけている壱さんが目に映った。
フーコは二本足で立ち、まるで抱きつくように壱さんにしがみついている。
どうやら壱さんが気に入ったみたいだ。
「フーコ見る目あるぅー!」
ビシッと親指を立てると、それに応えるようにフーコが振り返った。
「間違ってもその隣にいる変態とエセ男には近付いたら駄目だからね?」
「ちょ、りっちゃんそれひでぇ!」
「誰がエセ男だ、誰が」
ワザとらしく落ち込んでみせる彼方と、ギロリと横目で睨みにくる煌。
「えー、そんなの彼方と煌しかいないじゃん」
そんな二人に悪びれもなくそう笑い飛ばすと、
「お前等も凛音にやられっぱなしなんだな」
あたし達のやり取りを見た嵐ちゃんがクククと愉しそうに笑い出した。
「やられっぱなしって失礼な!」
むぅと頬を膨らませ、嵐ちゃんを睨み付ける。
「お前等が甘やかせて育てたからだろ?」
同じく愉しそうに笑みを浮かべた煌が嵐ちゃんに向けてそう言った。
「育て──」
「凛音は可愛いから仕方ない」
「……たって、へ?」
突如現れたのは至極真面目な声。
振り向くと、これまた真面目な表情をした貴兄の横顔が目に入った。
「貴兄……」
流石に皆の前でその発言は恥ずかしい。
だってホラ、今の発言で十夜達固まってるし。
いや、十夜はあまり変わりないか。


