「りっちゃんりっちゃん、顔ヤバいから!」


「むっ」


いけないいけない。煌の相手をしたら女じゃなくなる。


あたしはおしとやかな乙女だもんね!






「凛音?」


「貴兄!」


背後から聞こえた声に振り返ると、貴兄が此方に向かって歩いてきていた。


貴兄の後ろには優音達もいて。

どうやら皆揃ってお出迎えに来てくれたらしい。



「おかえり。遅かったな」


「ただいま!ちょっと色々あってね」


小走りで駆け寄り、いつものようにぎゅうっと抱きつく。


「色々?ってお前、なんか汚れてないか?」


そう言いながらあたしの頬をクイッと拭ってくれる貴兄。


「え?汚れてる?」


拭うぐらいだから結構汚れてるのかな。


手の甲でゴシゴシと擦る。


「コラ、あまり擦るな」


「だって汚れてるの嫌なんだもん」


擦る手を止められ、代わりに貴兄の指が優しく頬に触れた。


「取れた?……ってぇぇぇえ!?」


突然後ろに倒れる身体。


倒れたかと思えばすぐにポスンと受け止められて。


一体何事!?



「……って、十夜?」


背中を預けたまま上を見上げると、そこには十夜の整ったお顔があった。


え、なんであたし引っ張られたの?