……貴兄、なんで?
嘘でしょ……?
「優、なんで……?」
貴兄に問い掛けても応えてくれないと思ったあたしは、同じく視界に映っている優音に答えを求めた。
破裂しそうなぐらい揺れ動いている心臓。
答えを求めているのは自分なのに、その答えを聞くのが怖かった。
「……っ、」
けど、怖がる必要なんてなかったみたいだ。
何故なら、その答えを聞く事が出来ないと分かったから。
優音が、交えていた視線を逸らした。
それは、何も応える気はない、と言っている様なもの。
すなわち、中田の言ってる事が事実だと、そう捉えていいんだろう。
「なんで……」
「何事も用心に越した事はない。もしかしたらまた凛音を取り戻しに来るのかもしれないしな。
当然の行動だと思うが?」
サラリとそう言い放つ中田に何も言い返す事が出来なかった。
言い返そうと思っても、頭の中がグチャグチャで思うように思考が働かない。
中田の言葉がグルグルと脳内を駆け巡る。
“当然”
中田は“当然”と言った。
これって当然の事なの?
分からない。
もう、何が何だか分からないよ。
何が合ってて何が間違っているのか。
正しい答えは──?
それを導き出せない事には中田に反論なんて出来ない。


