「凛音」

「……っ」


そっとあたしを抱き寄せて、腕の中に閉じ込める。


その予期せぬ行動に一瞬息が止まった。


「……十夜?」


どうしたの?と小さく呼びかける。


すると、抱き締められた腕の力が強くなった。



「凛音。───」





「……え?」


故意なのか、それとも偶然なのか。


十夜の言葉は巻き付けられた腕によって遮られてしまった。


「え?なに?何て言ったの?」


「行くぞ」


「ちょ、十夜!?」


答える気がないのか、あたしの問いかけを無視して身体を離す十夜。


後頭部を覆っていた手はいつの間にかあたしの左手を握っていて、歩き出すと同時にその手を引いた。


「……っ十夜!」


いつもより歩く速度が早く感じるのはさっきの質問を聞かれたくないからだろうか。

それとも他に何か理由があるのだろうか。


「……っ、ねぇ!中田に何か言われたの?」


気になる事は聞かなきゃと思ったあたしは、繋いでいる手を引き寄せ、ダメ元で聞いてみた。