けど、仲良くするつもりはない。


今回のようにリンチに合っているのを見れば絶対助ける。


けど、それだけ。

それ以上は踏み込まない。


“踏み込んじゃいけない”


あたしは鳳皇を、

十夜を選んだのだから。


だから──


「……バイバイ」


こう言うしかないんだ。




中田はあたしの心情を分かっているんだろう。


だから何も言わずに微笑んだ。


そうだよね?中田。





「おじさん、お願いします」


「あぁ、任せといて。あ、嬢ちゃん!タクシー使う時はさっきの番号に電話して。いつでも飛んでいくから」


「はい!ありがとうおじさん!」


最後まで優しいおじさんは垂れた目尻を更に下げ、満面の笑みで笑ってくれた。


ゆっくりと閉まっていく窓。


それと同時に車が動き出す。



「りっちゃん、帰ろっか」


「うん!」


ポンッと頭に乗せられた手は温かくて。

けど、それ以上に皆の笑顔の方が暖かかった。


もう邪魔する者はいない。


今度こそ皆と一緒に帰れる。


そう、思った時。


「桐谷!!」


突然、後方から叫び声がした。


その声に全員立ち止まり、振り返る。