「りっちゃん番号知ってんの?」
同じく両耳を塞いでいる彼方がそのままの状態でコテンと首を傾げた。
「うん!そうそう!忘れてたの、コレ!」
ゴソゴソとポケットを探り、見ろと言わんばかりに掲げたのは一枚の紙切れ。
その紙切れに書かれているのは走り書きされた九つの数字。
「何、それ?」
「これ?これはタクシーの運転手さんの携帯番号!」
そう。これは、此処へ来た時に乗せて貰ったタクシーの運転手さんの携帯番号だ。
何かあったら電話して、と言われて手渡されたもの。
まさかコレが役立つ時が来るとは。
「何でそんなの持ってんだ?」
「探偵気分になったおじさんが心配して書いてくれたの」
「意味分かんねぇよ」
煌の鋭いツッコミを無視して、その電話番号に電話をかける。
数回のコールの後、『はい』と言って出たのは渋い男性の声。
「もしもし、さっき工場で乗せて貰った者ですが……」
『あぁ!さっきのお嬢ちゃん!』
電話に出た時とは打って変わり、声色がワントーン高くなるおじさん。
「おじさん、さっきはありがとうございました!」
その声色に緊張感が解け、口調が砕ける。
『いやいや。お嬢ちゃんは大丈夫だったかい?さっき結構な数のバイクが下りてきたけど』
「えっ!?」
バイクが下りてきた?
「おじさん今……」
『あぁ。おじさん、お嬢ちゃんの事が気になってね。あれからずっと山の麓にいたんだ』
ハハッと少し気恥ずかしそうに笑うおじさん。


