Ri.Night Ⅳ



「タクシーがある。お前は早く兄貴の所に帰れ」


「でも……」


「凛音、助けて貰った事には感謝してる」


「………」


「……けど、もういいから。

……これ以上俺を惨めにさせるな」


「……っ」



そう言った中田の瞳には微かな陰り。


その瞳を見ると、出かかった言葉も喉の奥へと引っ込んでしまった。




“これ以上惨めにさせるな”



……そう、だよね。


負けた相手に助けて貰い、その上家まで送って貰うだなんて、あのプライドの高い中田がさせる訳がない。


それに、きっとあたしでも同じ事を言うと思うから。


だから、あたしはそれ以上何も言わなかった。



「分かった。じゃあタクシーが来るまで此処にいてもいい?」


「……あぁ」


「じゃあ、タクシー呼ぶね」



って番号知らないや。



「凛音ちゃん、ちょっと待ってて。今から調べるから」


「ありがとう、壱さん」


携帯を取り出して調べようとする壱さんにお礼を言ったその時。


「あぁーー!!」


“ある事”を思い出した。



「お前、いきなり叫ぶなっていつも言ってんだろ!」


「壱さん!番号調べなくてもいいよ!」


「オイ、無視すんな!」



もう!それどころじゃないっつーの!


大袈裟に両耳を塞いでる煌を無視して壱さんにもういいよ、と手を振る。