昼間走った道を逆走し、“例”の男達を撒いた場所へと到着。
そこで彼方が一言。
「りっちゃん、まさか……」
「うん、そのまさかですよ、彼方サン」
やっぱり言うと思った。
彼方の顔を窺うと……うん。苦笑なんてモンじゃないね。
顔引きつってるし。
「駄目」
「へ?」
不意に聞こえてきた壱さんの声にコテンと首を傾げる。
「壱さん?」
「凛音ちゃんに危険な真似なんてさせられないよ」
「いや、でも……」
来る時に跳んだし。今更って言えば今更なんだけど……。
「駄目駄目駄目。落ちたらどうするの!」
「でも跳ばないと扉開けれないよ?」
「俺等で行ってくるから凛音ちゃんは引き返して。ね?」
「じゃあ俺とりっちゃんは戻──」
「えー。あたしも行きたいー。壱さん!お願い!」
「りっちゃーん!」
「ヘタレは黙ってて!」
「……」
ピシャリ、一喝すると、彼方は本当にヘタレてしまった。
一人しゃがんで「ヘタレって言わなくても…」とぶつくさ言っている。
ヘタレ彼方は放っておこう。
それよりも。
「壱さぁーん、お願い!」
壱さんを説得する方が大事だ。


