「彼方!もう少し!」
「う……ぎゃあぁぁぁぁあ!!」
「かな……っ!」
あと二段、というところで彼方が滑り落ちてきて。
慌てて受け止めようと手を伸ばすけど微妙に間に合わず、一緒にゴロンと転がった。
「いったぁー」
「……りっちゃんごめーん」
イタタと言いながら先に起き上がった彼方が手を引いて起き上がらせてくれる。
「お前等、大丈夫かよ?」
「凛音ちゃん、彼方、大丈夫?」
「大丈夫大丈夫。って早っ!!」
いつの間に降りてきたのだろうか。
見上げると、あたし達を心配そうに見下ろしている壱さんと陽の姿があった。
「ホラ」
彼方は壱さん。あたしは陽。
それぞれに手を引かれ、ゆっくりと立ち上がる。
「よしっ、行こう!」
立ち上がるや否やそう言って走り出すと、後方で「俺、先行き不安なんだけど…」と何とも不安げな彼方の声が聞こえてきた。
もう仕方ないなぁ。
「彼方、はい、手」
「……えっ!?りっちゃん手繋いでくれんの?」
「とか言いながらもう繋いでんじゃん」
走りながら彼方に手を差し出すと、声を弾ませながらあたしの手を取る彼方。
ホーントちゃっかりしてるよね。


