十夜を真っ直ぐ見据える壱さんはいつもの壱さんとは別人みたいに見えた。
何かあったのだろうか?
「あっ、ごめんね。怖い顔してた?」
「う、ううん!そんな事ないよ!」
マジマジと見すぎていたのか、あたしの視線に気付いた壱さんが眉を下げて申し訳なさそうに笑いかけてくれた。
「こっちも倉庫内を手当り次第探してみたけど出れそうな所は無かった」
「……そうか。どうする?二階から出るか?」
険しい表情で考え込む十夜と煌に流石のあたしも黙り込んでしまった。
ホント、どうしよう。
煌の言う通り二階から出るしか道はないのだろうか。
二階からなんて、落ちたら危ないし。
誰か外にいてくれたら開けて貰えるのに……って、
「あっ!!」
「び、びっくりしたぁ……」
「おま、いきなり大声だすなよ」
突然の大声に跳び上がる煌と壱さん。
陽と彼方までもが「なんだなんだ?」と言って近寄って来た。
何で忘れてたんだろう。
「あそこから出ればいいんじゃん!」
あたしがこの工場に入って来た道があったじゃないか!
「何処か出る所があるのか?」
「うん。あたしがこの工場に入って来た道」
「はぁ?どこもかしこも閉まってんぞ?」
煌の怪訝な顔ににやりと笑い、ピースする。
「凛音ちゃんに不可能はない!!という訳で、早速行ってくるね!」
「ちょ、ちょっと待って!凛音ちゃん一人じゃ危ないよ!?」
じゃあ、と片手を上げて走り出そうとした時、壱さんに腕を引かれて引き止められた。


