「陽くん、今の壱に近付いたら怪我するぜ?」


壱を見てニシシと笑う彼方。


そんな彼方に壱はいつものキラキラスマイルを向けると、


「陽に怪我させる訳ないでしょ?」


そう言って、来た道を戻り始めた。


ここからは出られないと悟ったからだ。



「壱!」


「凛音ちゃん達の所に戻ろう。見たところ窓や扉は全て塞がれてるようだから」



壱の視線の先には横並びになった窓。


その窓には斜めになった一本の棒が透けて見える。


多分木か何かだろう。



「随分と用意周到だな」


「……もしかしたら計算の内だったのかもしれないね」


廊下を進みながら部屋という部屋を覗いていくけど、やはり全ての窓が塞がれていた。






「──ちょっと待て」


吹き抜けホールにある階段に足を掛けた丁度その時、煌の携帯がポケットの中で震えた。


携帯を取り出して見てみる、と画面に表示されているのは十夜の名前で。


煌は通話ボタンを押し、直ぐ様スピーカーホンにした。



『──煌か?奴等はどうなった?』


「悪い。逃がした」


『そうか』


『煌、あたし達閉じ込められちゃった!どうしよう!?』



「はぁ?」

「は?」

「え?」

「はぃー!?」



突然告げられた衝撃発言に素頓狂な声を上げる四人。