「中田──」
「……っ、来るなっ!」
「……っ!」
走り出そうとした時、男達の中から苦しげな叫び声が聞こえた。
それは紛れもなく中田の声で。
「中田……!!」
その声に向かって思いっきり叫ぶ。
と同時に、一度止めた足を再び前へと出た。
「お前は行くな」
けど、それは左肩に置かれた手によって簡単に阻止された。
「十夜……!」
振り返ると、そこにいたのは十夜で。
直ぐ様その胸元にしがみつく。
「十夜、中田が……!」
「分かってる。お前はここに居ろ」
そう言った十夜はあたしの頭に手を乗せ、男達の方へと目を向けた。
瞬間、色を変える十夜の瞳。
漆黒の中に一筋の光が差し込んで。
鋭く、射るような視線が男達に突き刺さる。
それを感じ取ったのか、中田を足蹴にしていた男が一人、こちらを振り返った。
その男は十夜を見るや否や後退し、今の今まで嬉々としていた表情を一変させる。
そんな顔をしてももう遅い。
「行くぞ」
十夜は男と目が合った時にはもう、男達に向かって走り出していたのだから。
いや、十夜だけではない。
「お前は来んじゃねぇぞ」
煌達も既に真後ろにいた。


