Ri.Night Ⅳ


「ホラ、さっさと住所言えって」


煌にそう言われ、顰めっ面になりながらも住所を区切りながら伝える。



「よいしょっ、と……」


言い終えたあたしは、何気なく窓の外へと目を向けた。


すると……。



………え?



視線の先には、さっき出てきたばかりの扉に寄り掛かる一人の男がいて。


誰だろうと窓に近付き、目を凝らして見てみた。


最初中田かと思ったけど、中田じゃない。だって、服が違う。


それに、中田は帽子を被っていなかった。



……じゃあ、あの男は?



そう思った時、男がこっちに振り向いた。


「………っ」


かと思ったら、ゆっくりと手を上げ、まるで友達に挨拶するみたいにバイバイと手を振る男。


数秒程そうしていた男はゆっくりと手を下ろすと、何事もなかったかのように工場の中へと入っていってしまった。


その後ろ姿に妙な胸騒ぎを覚える。


少しずつ大きくなっていく心音。



何か……何かある。


そう思った時にはもう身体が勝手に動いていた。


勢いよく後部座席の扉を引き、車から飛び降りる。



「凛音!!」

「りっちゃん!?」

「凛音!!」



背後で皆の声がしたけど立ち止まらなかった。



早く行かなきゃ。


頭の中にはもうそれしかなかった。




嫌な予感がする。


物凄く嫌な予感が。







「………っ!」


工場の出入口に辿り着いた時、飛び込んできたその光景に大きく目を見開いた。




「中田!!」