「ホラ、さっさと住所言えって」
煌にそう言われ、顰めっ面になりながらも住所を区切りながら伝える。
「よいしょっ、と……」
言い終えたあたしは、何気なく窓の外へと目を向けた。
すると……。
………え?
視線の先には、さっき出てきたばかりの扉に寄り掛かる一人の男がいて。
誰だろうと窓に近付き、目を凝らして見てみた。
最初中田かと思ったけど、中田じゃない。だって、服が違う。
それに、中田は帽子を被っていなかった。
……じゃあ、あの男は?
そう思った時、男がこっちに振り向いた。
「………っ」
かと思ったら、ゆっくりと手を上げ、まるで友達に挨拶するみたいにバイバイと手を振る男。
数秒程そうしていた男はゆっくりと手を下ろすと、何事もなかったかのように工場の中へと入っていってしまった。
その後ろ姿に妙な胸騒ぎを覚える。
少しずつ大きくなっていく心音。
何か……何かある。
そう思った時にはもう身体が勝手に動いていた。
勢いよく後部座席の扉を引き、車から飛び降りる。
「凛音!!」
「りっちゃん!?」
「凛音!!」
背後で皆の声がしたけど立ち止まらなかった。
早く行かなきゃ。
頭の中にはもうそれしかなかった。
嫌な予感がする。
物凄く嫌な予感が。
「………っ!」
工場の出入口に辿り着いた時、飛び込んできたその光景に大きく目を見開いた。
「中田!!」


