そんな彼方を引き離してくれたのはやっぱりこの人。


「彼方、今すぐ離れねぇと手を繋ぐのも許さねぇぞ」



我等が総長様。



「離します離します。りっちゃんと手繋ぎてぇもん!」



そう言って慌ててあたしから離れた彼方は、「ん、手」と言いながら右手を差し出してきた。


陽の時と同様に手を乗せて握り締めると、彼方はヘヘッと嬉しそうに頬を緩ませて。


眼鏡の奥の垂れ目が更に垂れ下がった。


不覚にもその顔が可愛いと思ってしまったあたし。

急にわんこになんないでよね。






「なぁ、早く行かねぇと煌がキレてくるぞ」


「ホントだ。あれはキレる寸前だね」


陽と壱さんの声に振り返ると、


「あちゃー」


二人の言った通り、出入口の扉にもたれ掛かっている煌が凄い形相でこっちを睨んでいた。



「遅い!チンタラしてんじゃねぇよ!」



急いで煌の元へ行くと、見た目通りかなりご立腹の様で。



「ママ、あまり怒ったら──」


「それ以上言ったら頬っぺた思いっきり抓るからな」


「………」



そう言うや否や、ピタリと口を閉じたあたし。



危ない危ない。

煌は必ず有言実行する奴だ。


もう少しであたしの頬っぺたちゃんが犠牲になるとこだったよ。



「ホラ、行くぞ」


ピンッとあたしのおでこにデコピンをした煌は、スタスタと先に歩いていってしまう。


だから痛いっつーの!!