「皆、ありがと……」


「ちょ、お前何泣いてんだよ」


「泣いてないよ。鼻水だもん」


「お前の鼻水は目から出んのかよ」


「わっ……!」



煌の大きな手があたしの頭を乱暴に掻き回してグチャグチャにする。


もうこれ何回目!?



「ちょっと!何すん──」 


「バーカ。俺等は仲間だろうが」



その声に顔を上げると、隣にいた筈の煌がいつの間にか目の前にいた。



「煌?」


「何やってんだよ。置いてくぞ」


歩きながら後ろをチラッと振り返る煌の表情は物凄く意地悪そうで。


けど、瞳は優しげに揺れていた。



「……アイツ、リっちゃんが帰って来てすっげー喜んでんな」


「煌だけじゃなく俺達もね」


「壱さん……」



クイッと涙を拭ってくれる壱さんは相変わらず優しさに満ちていて。


その笑顔に涙が引っ込んでいった。


代わりに、あたしから零れるのは笑顔。


その笑顔に壱さんが更に目尻を下げて笑い返してくれる。



「凛音ちゃん、もう鳳皇からいなくならないでね?」


「……っ」


「次居なくなったら強烈なデコピンだからな!」


「え、それは嫌かも」


「じゃあ此処に居なさい」


「……っ、うんっ!!」



久しぶりに見た皆の笑顔。


やっぱりあたしにはこの笑顔が必要だ。


この笑顔が無いと寂しい。





「凛音、帰るぞ」


「うんっ!」



一緒に、帰ろう。


同じ場所へ。


そして、ずっとずっと一緒にいよう。



この命がある限り、ずっと。