「話しがある」
傍にやって来た貴兄が十夜に向けてそう言い放つ。
「はな、し……?」
その言葉に返事したのは十夜ではなくあたしで。
貴兄のその真剣な口調が不安を募らせていく。
「凛音、さっき“和解”って言っただろう?それについてだよ」
「和解……」
不安が表情に表れていたのか、あたしを見た貴兄はフッと笑みを零した。
その笑みにホッと胸を無で下ろす。
なんだ、“和解”についてだったのか。
貴兄が十夜達に危害を加えないと分かっているけど、まだどこか不安が残っていて。
ちょっとした事で揺らいでしまう。
「桐谷、いいか?」
「あぁ」
再度十夜へ目を向けた貴兄がそう問いかけると、十夜は小さく頷きギュッと手を握ってくれた。
貴兄からは見えない位置で繋がれる手。
変な緊張感に襲われたけど、それよりも嬉しさの方が上回る。
十夜の何気ない仕種に胸がきゅんと疼いた。
あぁ、もう心臓が持たないよ。
「此処じゃなんだからウチへ来てくれないか?」
「……獅鷹へ?」
「いや、俺達の家だ」
「えっ!家!?」
まさか家とは思わなくて、思わず驚愕の声を上げてしまった。


