「戻って来て早々締まりのない顔すんな」
「悪かったですねー締まりのない顔で。あたしはもともと締まりがないんですー」
大袈裟に溜め息を吐いて見せる煌に、それこそ戻って来て早々毒を吐くあたし。
長い間離れていたにも関わらず、煌の態度は離れる前と全然変わらない。
分かってる。
それが煌の優しさだってこと。
「あーそうだったな。失礼」
煌なりの思いやりなんだって分かってる。
「──凛音」
煌と一緒に近寄って来た十夜があたしの頬にそっと手を伸ばしてきた。
それと同時に伝わる熱。
壱さんとは違う高鳴りがあたしの胸中を襲う。
「あんま危ないことすんな」
「……うん」
さっきまでの態度は何処へやら。
十夜に触れられた途端、急にしおらしくなって。
その優しい声色に激しく心音が乱される。
「凛音」
「た、貴兄……」
聞きなれたその声にビクッと肩が飛び跳ねた。
直ぐ様振り返ると、視線の先には獅鷹幹部を引き連れて歩いてくる貴兄の姿があって。
その姿を見た瞬間、ハッと今の状況を思い出した。
慌てて十夜から離れる。


