「……手に入れる事しか頭になかった。“やり方”を間違えても手に入れたかったんだ。
……嫌われて、当然だよな」
「……中田」
「それなのにアイツはちゃんと返事をしてくれた」
中田もまた凛音の気持ちに気付いていた。
いや、気付かされたんだ。
あの瞳に。
真っ直ぐなあの瞳に。
「俺の目を見て、真剣に返事をしてくれた」
今まで酷い仕打ちをしたにも関わらず、凛音は他人に任せるのではなく自分の言葉で終わらせようとしてくれた。
それが中田の心に響いた。
「だろ?」
「俺達の自慢の妹だ」
恥ずかしげもなく自慢げにそう言った嵐と貴音に、フッと呆れたように口角を上げる中田。
──こんな兄貴達に囲まれていたらそりゃイイ女に育つ筈だ。
中田がそう小さく呟いたのはきっと誰の耳にも届いていないだろう。
今、兄貴達の目には愛しの妹、凛音しか映っていない。
「これ以上哀しませる訳にはいかないんだ」
貴音の口からポツリと落とされた言葉。
その穏やかな表情とは裏腹に、貴音から吐き出された声色は鋭く、そして儚かった。
凛音へ向けられた幾つもの視線が一斉に貴音へと向けられる。
「……お前、本当に“あの事”奴等に言わねぇつもりか?」
「言う必要のない事は言わなくていい」
「でも……」
「いいんだ」
「………」
──獅鷹もまた、真実を闇の中へと葬った。
両者の選択が吉と出るのか凶と出るのか。
それはまだ、今の時点では分からない。
-客観的視点 獅鷹side end-


