「いいんだよ」


再び凛音へと目を向けた嵐が、胴上げされている凛音を見て微笑ましげに目を細める。


「さっきの言葉は俺達の本心だから」



“さっきの言葉”


それは──



“鳳皇に行って凛音がずっと笑顔でいれるのなら、僕達はそれでいい”



時人が凛音に言った言葉。


それは紛れも無く時人達の本心だった。



「でもお前は──」


「中田、お前は何処まで知っている?」



中田の言葉を遮ったのは、凛音に目を向けたままの貴音。


その表情は既に真顔へと戻っていて、先程の膨れっ面など少しも残っていない。




「──全て」
 


そんな貴音に臆する事なくそう告げた中田に、貴音は凛音からおもむろに目を逸らした。


逸らされた視線はそのまま中田へと向けられる。



「……全て、か」


「………」


そう零した貴音の表情に変化は無い。


貴音はその後何も言わず、再び凛音へと視線を戻した。


中田は貴音のその意味深な表情に怪訝に顔を歪め、見据える。



「それを凛音に言わないで欲しい」



突然貴音口から言い放たれた言葉に中田は少しだけ目を見開いた。


けど、それもすぐに元の怪訝な表情へと戻る。