裏事情を暴露し始めた中田を見て、貴兄が声を荒立てて制止する。
「尾行してたんだよ」
だけど、中田はその声が聞こえていないかの様に話し続けた。
「尾、行?」
自分の口から零れたのは、聞き取れない程小さな声。
あたしの言葉を聞いた貴兄は、あたし達からフイッと視線を逸らすと、クシャッと乱暴に前髪を掻き上げて苛立ちを露にした。
止めても無駄だと悟ったらしい。
逸らした視線は此方に戻ってくる事なく逸らされたままで。
そんな貴兄を横目で一瞥した中田は緩やかに口角を上げ、そのまま話しを続けた。
「お前と鳳皇が決別した日から、俺は鳳皇の動きを見張っていた」
「………」
「宮原は鳳皇に顔を出さなくなったんだよ」
「……え?」
陽が、顔を出さなくなった?
「凛音を引き止めなかった事が気に食わなかったんだろうな」
「………」
「宮原はお前に会いに行くまで一度も溜まり場には行かなかった」
陽……。
あの時の陽の表情が脳裏に浮かぶ。
あの、泣きそうな表情が。
「宮原が顔を出していないと知った時、予感がしたんだ」
「よか、ん……?」
「そう、予感。宮原が……凛音、お前の元へ行くかもしれないと」
「なっ……!」
中田の言葉に思わず目を見開いた。
予感。
たったそれだけで。
たったそれだけで陽を付け回していたの?
「……じゃあ、公園で陽と喧嘩していたのって、まさか……」


