貴兄が止めてくれた。
それだけで期待が高まる。
もしかしたらまだ抗争を止めさせられるかもしれない。
説得すれば──
「過ぎた事だ。わざわざ言う必要はない。
……そろそろ奴等が来る。行くぞ」
けれど、その期待は貴兄の言葉によって木っ端微塵に砕かれてしまった。
「貴兄……」
呼び掛けた瞬間、スッと逸らされた視線。
「……っ、」
その仕種で悟ってしまった。
貴兄は鳳皇との抗争をやめる気なんてサラサラないのだと。
貴兄、なんで……?
貴兄のたった一言であたしの心は脆く崩れていく。
「そう言うなよ。それに、奴等が来たら電話が来るんだろう?それまでいいじゃねぇか。凛音も知りてぇみたいだし」
扉の方へ歩き出そうとする貴兄に中田はクククと肩を弾ませながら引き止める。
「中田──」
「凛音、宮原がお前に逢いに行った事を兄貴に言ったのは俺だ」
「なっ……!?」
貴兄が振り返り、中田の名前を呼んだ瞬間、中田の口からとんでもない事が言い放たれた。
……今、なんて?
「中田!!」
「俺の下の奴が見てたんだよ。公園で宮原と数人の男達が喧嘩してるのを」
「……っ」
嘘、でしょ……?
「たまたま見た、って訳じゃねぇけどな」
「中田!!」


