余裕ぶりたいのならそれでも構わない。
いくらでも余裕ぶったらいい。
そんな事よりも、今はさっき聞いた言葉の方が気になった。
“あたしのお陰”ってどういう意味……?
あたしが関係しているの?
「教えて欲しい?」
「………っ、」
まるでお願いしてみろとでも言わんばかりの口調。
愉しそうに笑うその表情にあたしのプライドが邪魔をする。
中田に『教えて欲しい』だなんて言いたくない。
貴兄を唆した中田になんて、言いたくない。
けど、言わなきゃ教えないと中田の笑みが言っている。
「どうする?」
中田の口元に弧が描かれる。
それを見てギリッと唇を噛み締めた。
いつの間にか涙は止まっていた。
哀しみの感情は怒りの感情へと姿を変え、さっきまで虚ろっていた瞳は今ではもう鮮明に中田を映し出している。
中田を見る視線は自分でも解るぐらい鋭い。
だけど、中田はその視線を受けても笑顔を崩す事はなかった。
「凛音──」
「中田、やめろ」
……っ、貴兄……?
中田の言葉を遮ったのは、今までどれだけ問いかけても応えてくれなかった貴兄だった。


