「あー、まいった」 とちょっと筋を違えた気がする首を捻りながら、春日は夜の境内を歩いていた。 振り返ると、また何事か子どものような言い合いをしているらしい二人の影が見える。 くすりと笑みを漏らした。 自分は― 自分たちの叶えられなかった夢を彼らに託しているのだろうか。 春日は透子の影を見ながら、額の中央に手をやる。 「でもね、透子さん。 僕― 貴女のことだけが見えないんです」 そう呟くと、離れに背を向け、黒い林に向かい、歩き出した。 了