落日の楽園(エデン)

「どうして? 舞」

「介弥……。
 私たち、本当は―」

 舞は、どうしても、次の言葉が出せず、緑のカーペットに爪を立てた。

 だが、介弥は、あっさりと言う。

「知ってるよ」

 え? と舞は顔を上げた。

 介弥は肩をすくめて言った。

「知ってたっていうか、覚えてた。

 だって、お前が坂口の家に引き取られたのって、二歳くらいのときだろ?

 そのくらいの記憶はあるさ」

「あ……あんたも覚えてたの?」

 それを聞いて、介弥は笑った。

「なんだよ、お前。自分だけが覚えてて、俺は覚えてないと思ってたのか?」

 だって、そんなこと一言も言わないし、と舞は拗ねたように彼から顔を背けた。

 そして、気づいた。

 知ってた……?

 待って。
 じゃあ、なんで今―

 振り向くと介弥は遠く、窓の外を見ていた。

 雨はまだ、振り続いていた。