美術室には誰もいなかった。
 遠くの教室から授業の声が聞こえる。

 舞は隣の準備室に入った。

 そこには、舞たち部員の絵がしまってある。

 舞は自分の絵を取り出し、床の上に置くと、上から覗き込むようにそれを見た。

 一面の緑の中に立つ彼を、舞は眩しいもののように見つめる。

 緑のところどころに、廃墟らしきものが見える。

 これは、文明の滅びた後なんだろうか

 自分で無意識に描いたものの意味を見出そうと、舞は目を凝らした。

 そのとき、ガラリと後ろの戸が開いた。

 はっと舞は振り返る。

 先生だったら、何か言い訳をしなければいけない― そう思っていた。

 だが、そこに居たのは―

「春日……」

 戸口に立って自分を見下ろす春日は、少し困ったような顔をしていた。

「まだいたの。早く行かなきゃ。お母さん待ってるわよ」

 ばか、と言うと、春日は後ろ手に戸を閉めた。

「お前を置いていけるか」
 そう言って、舞の元に近づいてくる。

 舞は立ち上がらずに、ただそれを見ていた。