自分より頭一つは大柄な男を見上げて、リュカはけれど、怖気付くことなく睨み返す。
「何だ、その目は。おまえ、俺たちがはしごを貸してやった恩を仇で返しておいて、まだ文句があるってぇのか」
「今回のことは君が親方を侮辱した、その仕返しだ」
リュカの言葉が思いがけなかったのか、男のつり上がった眉がピク、と動いた。
「技術ばっかり鼻にかけて、だとか。あんなもの芸術とは言わない、とか……。はしごのひびなんて、下手したらはしごが壊れて落ちて死ぬかもしれないのに、なのに、ゲラゲラ笑って」
ブルブルと、リュカの握り込んだ右の拳が震えるのが見えた。
「それが許せなかった」
拳とともに、声も震えていた。
――陽だまりのように穏やかなリュカが、こんなに怒っているところを初めて見た。
そう思って、違う、と気づいた。
初めてではないはずだ。
あのときに見たはずだ。
――はしごを借りにきた、あのときに。
すべての表情を消し去ったかのような、リュカの顔を。



