「リュカ……?」
怪訝そうな顔のルイに、リュカは自嘲するように薄く笑ってみせて。
「レイエの祭壇画を隠したのは、俺だよ」
聖堂に虚ろに響く靴音のように、ただ静かにじんわりと、リュカの言葉は工房の作業場に落ちた。
誰もが黙ったまま、リュカを凝視していた。
ベルも、ルイも、ジルも、エドガーでさえも。
「倉庫に積んであるティツィアーノの模写の、真ん中あたりに紛れ込ませてる」
その言葉で我に返ったように、レイエ工房の徒弟たちが一人、二人と倉庫のほうへ駆けていく。
バラバラと、けれど誰もがどこか浮き足立ったように駆けていき、残ったのはルルーの面々と、ルイと最初に怒鳴っていた男だけだった。
「どういうこと……? なんで、リュカがそんな……」
ルイが途方にくれたような顔でつぶやくように言った。
その隣を大股ですり抜けリュカの前に立ったのは、レイエの徒弟の男だった。
「説明してもらおうか。どういうつもりでこんなくだらねぇことをしたのか」



