「そうか」
すぐ隣から聞こえた低い声に、ベルは顔を上げた。
いつも気難しい顔をしたエドガーが、ほんのすこし、いつもよりも目を細めてルイを見ていた。
「……実際、そうなんだろう。こっちもベルがひびに気づいて、なんともなかったんだ。どうか、気にしないでくれ」
エドガーの言葉に、ルイは頷く。
エドガーの言葉は本心だと、ベルにはわかる。
そして、きっとルイもそれをわかっていることも、わかる。――けれど。
けれど、きっとルイはもう、ルルー工房には来ない。
ルイの、やけに静かな表情がそれを物語っていた。
――こんなのって、ない。
「ルイ、あの」
「あのさ、ルイ」
何か言わなければ。
衝動で呼びかけたベルは、けれど重なった声に言葉を止めた。
声を上げたのはリュカだった。
「ルイは、俺たちに会わせる顔がないとか、そんなふうに思ってるんだと思うんだ。けど俺、そんなの嫌だよ。
ルイはこれからだって、うちに気軽に遊びに来ればいい。……ルイが、俺を許してくれるなら、だけど」



