描きたい。
強くそう思った。
――あたしの手で、描きたい。
そのためには、早くこんな大仕事を任せてもらえるようにならなくてはいけない。
もっともっと勉強して、描いて、描いて、上手くならなくてはいけない。
近いうちに、レイエ工房の彫刻レプリカをデッサンさせてもらいに行こう。
明日か、明後日にでも。
ベルが胸の内でそう決心した矢先。
ぽん、と、頭の上に何かが乗った。
その感触をもうベルは知っている。
例えばベルが上手く絵の具を生成できたとき。
例えば一つ新しい仕事を覚える度に、まるで言葉の代わりのように、不器用に頭を撫でるその手のひら。
目を上げると、ベルの背後にエドガーが立っていた。
大きな手のひらをベルの頭に置いて、心なしか柔らかい表情をしている、ような気がする。
「完成の余韻に浸るのは後だ。今日のうちに綺麗に片付けないと、仕事が終わったことにはならないぞ」
「は、はいっ!」
「まずは四人でレイエにはしごを返しに行こう。ベルは手土産を持って行ってくれ」
「はい!」