そして円蓋の中央。
熾天使たちの上に立つ救済者イエスは、赤いローブをまとい、厳しい表情で最期の審判を告げる。
隣に立つ聖母マリアはウルトラマリンの青いローブに身を包み、憐みの目を地獄の罪人に向けている。
正確な仰視法によって描かれた審判の光景はまさしく天上の世界。
今まさに頭上で行われているかのようで、その臨場感に鳥肌が立った。
「すごい……」
ため息混じりに言ったベルの肩を、リュカが労わるようにぽんぽんと叩く。
「予定通りに完成できたよ。ベルのおかげだ」
「えぇっ!? 僕、何もしてないよ」
「はしご、おまえがレイエに借りるって言わなきゃ、最低でも二、三日は完成が遅れただろうよ」
珍しくくしゃくしゃに笑って、反対側の肩を叩いたのはジルだ。
「おまえの手柄だ。素直に威張っとけ」
な? と、二度目に強く肩を叩くジルに、痛いような嬉しいような、微妙な笑みを返して、ベルは再び天井を見上げた。
本当に、何もしていない。
絵の具の生成や荷運び程度のことしかしていない。
――それなのに、完成した絵がこんなにも誇らしい。