「どんな話してるか、気にならない?」
「…………え」
言うが早いか、リュカはぽかんとするベルの手を引いて、ずんずんと倉庫の奥へ進んでいく。
「ちょ、リュカ、盗み聞きでもする気? 駄目だよ、怒られるよ」
ベルの制止を聞かず、リュカはそのまま扉を開ける。
その先は廊下で、廊下は途中で台所や食料庫に分岐していた。
廊下を抜けた先に見えるのはどうやらリビングらしく、この廊下から先はレイエや徒弟たちの生活の空間だと容易に察せられた。
さすがにそんなプライベートな領域に部外者が踏み込むことには躊躇したのか、リュカの歩みはそこで止まった。
おそらくこの先のどこかにレイエの部屋があり、エドガーはそこにいるのだろうが、
招かれてもいない二人がズカズカと入っていくのはあまりにも無礼だ。
ベルはリュカに掴まれた右手を引いた。
「引き返しておとなしく待とう」
「……そうだね」
リュカが頷いて、踵を返そうとする――そのとき。



