工房までは、二人で重く長いはしごを運ぶのは危険なので、三人で運ぶことになっている。
ジルは工房に残って簡単な片付けと次の作業をしていて、レイエ工房には一緒に来ていないのだ。
ベルはリュカに絵の具生成の調合を教わりながら、エドガーが戻ってくるのを二人で待っていた。
――けれど。
「……遅いね」
話し込んでいるのか、しばらく経ってもエドガーが戻ってくる気配はない。
否、時間はそれほど経っていなかったのだが、暇でしょうがないのだ。
絵の具の調合講座も、座学だけでは限界がある。
二人とも早く作業を進めたくてうずうずしていた。
「ねぇ、ベル。親方とレイエさん、仲良さそうだったよね」
唐突に、リュカが言った。
いきなり先刻の話を持ち出してどうしたのか、と思ってリュカを見ると、
人当たりのいいリュカにしては珍しく、いたずらを思いついた悪ガキのような顔をしていた。
日頃は大人びて見えるのに、こういう顔をすると年相応の少年に戻ったかのようだ。
そんな妙なところで感心していると、リュカが立ち上がった。



