へぇ、とため息まじりに言って、ベルは改めて倉庫を見渡した。
これだけ大きな工房をもち、これだけのレプリカや模写を集めたくらいに裕福な画家だ。
相当な実力の持ち主なのだろう。
「ベルトランくん、だったかな。エドガーの新しい弟子は。君もいつでもデッサンしに来ていいんだよ」
「え、本当ですか!?」
願ってもないことばに、ベルは目をキラキラと輝かせてレイエを見上げた。
「もちろん。リュカも、暇があれば来るといい。いつでも歓迎するよ。ジルベールにもそう伝えてくれ」
レイエが朗らかに笑って言うと、リュカは嬉しいような困ったような曖昧な表情で軽く頭を下げる。
「梯子は全部そこに立てかけてあるから、高さの合うものを持っていくといい。それから……」
始終柔らかに微笑んでいたレイエの表情に、一瞬、影が差した。
あれ? と思ったときにはもう戻っていて、気のせいだろうか、と、ベルは内心で首を傾げた。