天井を見上げたままのベルの隣で、ルイがため息をついた。
ベルは「……そうですね」とつぶやくように言って、苦い顔をしたルイの方を向くと。
「でも、素敵ですね」
と言って、子供のように目をきらきら輝かせる。
「え?」
「だって、彫刻はミシュレさん、祭壇画はレイエさん、天井画はルルーさん、って、それぞれベルシー地域の最高の画家と彫刻家なんですよね」
「えっと、うん、そうだけど……」
「じゃあ、この教会って、ベルシー地域の芸術の結晶じゃないですか。それって、僕は、一つの工房だけに全て作らせた教会よりも、素敵だなって思います」
眩しげに目を細めて、すこし照れたように、けれど嬉しそうに。
ベルは笑ってみせた。
その言葉に驚いたのか、ルイは大きく目を瞠り、天井を見上げたベルの横顔を見つめた。
一度息を吸い吐くまでの間そうしてベルを見つめ、やがてルイもふわりと笑って、ベルの視線を追うように天井を見上げる。
エドガーはもう微調整や確認を終え、主祭壇のドーム天井をじっと見つめている。
おそらくドーム天井の絵の構成等を頭の中で練っているのだろう。
広い聖堂の神聖な静謐の中、ベルとルイはただ座って、天井を覆う神の物語を見つめていた。