「でも、気をつけて。市街なんてみんなそんなものだけど、このへんも治安はよくないから。

スリや喧嘩なんかも多いし、余計なことに巻き込まれないように」


そう言われ、ベルは一瞬言葉に詰まった。

それならついさっき巻き込まれに行ったばかりだ。


この辺りの地理に詳しくない上に、スリの対策の仕方などまるでわからない温室育ちのお嬢様である自覚はある。


やはりそのうち連れて行ってもらえる日を待つ方がいいだろうか、としばらく考え込む、――が。


やはり見に行きたい気持ちが勝った。

そのうち連れて行ってもらえるとしたら、おそらく手伝いをしに行くか完成作を見に行くかのどちらかになるだろう。


描いていく過程をゆっくり見れる機会を逃したくはない。


腹は決まった。

ベルはリュカを安心させるように笑って言った。


「うん。気をつける。ありがとう」