「リュカ・シルヴェストル。よろしく、ベルトラン」


「じゃあ、お言葉に甘えて。よろしく、リュカ」


ベルも笑って、リュカの手を握った。

その様子を見ていたエドガーはひとつ頷くと、

「では、俺は仕事に戻る。あとは頼んだぞ、リュカ」

そう言って、来た道を戻り始めた。


その背を見送りながら、ベルは「仕事って?」と、リュカに尋ねる。


「今ね、うちはサン・マテュー教会の天井画と祭壇画を任されているんだ。モンフォール枢機卿直々に依頼された。小さい工房だけど、腕は確かなんだよ」


さあ、と、リュカに促されて、ベルは工房の中へ足を踏み入れる。


絵を運びやすいように工房の入り口はまるで倉庫のように大きな口を開けていて、入ってすぐが制作場だ。


きれいに整頓されて置かれた絵の具、絵の具の材料や絵筆。


キャンバスの板枠、様々な胸像、梯子、完成した絵に、未完の絵。


ごちゃごちゃとたくさんあるそれらをベルは眺めながら、リュカの後についていく。