ルルー工房の月曜の午後




そうしてしばらくして、おそるおそる顔を上げると、男はまだ不審そうな顔をしていた。


――駄目だ。


絶対に嘘だとバレている。


そう悟って、ベルは諦めた。


「……すみません、嘘です」


小さなため息とともに、吐き出す。



「本当は、親も家もちゃんとあります。けれど、家を明かすわけにはいかないんです」



「家出か」


「はい。画家になりたいと言っても反対されるので、家を出ました。だから身元が知れると困るし、徒弟金も持っていないんです」



男は無表情のまま、黙ってベルのデッサンを見つめている。



「あ、あの……?」



どうしたらいいかわからず、ベルが困惑の声を上げると。



「俺は、エドガー・ルルーという」



男は――エドガーは唐突に名乗って、無造作な仕草でベルにデッサンを返した。