ルルー工房の月曜の午後




慣れないことをしたせいか、しばらく呆然としていたベルは、男に問われてしどろもどろに答えた。

すると男はひとつ頷き、ベルの後ろの少女に視線を向ける。


「うちのモデルを助けてくれて、礼を言う。……ジゼルは、怪我はないか」


少女はジゼルという名らしかった。


「大丈夫よ。そこの坊やのおかげで」


女性にしては背の高いジゼルは、ベルと目線を合わせてすこしかがみこむと、美しい顔に笑みを浮かべる。


「ありがとう、坊や」


「あた……僕はもう十七です!」


背が低いことをすこし気にしているベルは、むっとして言い返した。

すると、ジゼルは失礼なことに、心底驚いたように目を丸くする。


「あら、そうなの? あたしよりたったのひとつ下だとは思わなかったわ」


これは失礼、と言ってちょこんと頭を下げたジゼルの笑顔は、どこか野良猫じみている。