慣れないことをしたせいか、しばらく呆然としていたベルは、男に問われてしどろもどろに答えた。
すると男はひとつ頷き、ベルの後ろの少女に視線を向ける。
「うちのモデルを助けてくれて、礼を言う。……ジゼルは、怪我はないか」
少女はジゼルという名らしかった。
「大丈夫よ。そこの坊やのおかげで」
女性にしては背の高いジゼルは、ベルと目線を合わせてすこしかがみこむと、美しい顔に笑みを浮かべる。
「ありがとう、坊や」
「あた……僕はもう十七です!」
背が低いことをすこし気にしているベルは、むっとして言い返した。
すると、ジゼルは失礼なことに、心底驚いたように目を丸くする。
「あら、そうなの? あたしよりたったのひとつ下だとは思わなかったわ」
これは失礼、と言ってちょこんと頭を下げたジゼルの笑顔は、どこか野良猫じみている。



