【一花side】
ジリジリと蝉の声が庭から聞こえる。
夏真っ盛りの今日は紫音の誕生日。
テーブルには初めて目にする婚姻届があり、おじいちゃんがゆっくりとハンコを押した。
本日、あたしは龍崎になります。
お兄ちゃんの勧めで、早めの行動を取るため紫音の誕生日に入籍。
その婚姻届は今、お兄ちゃんの手に。
「じゃあ…俺が代理で届けるね」
「ありがとう、お兄ちゃん‼︎」
「頼むぞ。旺太」
「はい、お祖父様。一花、また時間ある時連絡するな」
ひらひら手を振り行ってしまった。
お兄ちゃんのおかげで、あたしは幸せになれたよ。
〝結婚〟って実感湧かないけど、あたし奥さんなんだね⁉︎
なんだか不思議………。
「おばあちゃん。結婚ってどんな感じ?」
「そうね……悪くはないわよ」
優しく微笑み、お茶を飲むおじいちゃんを横目で見る。
きっと、これから色々知ってくのね……。