蒸し暑い空気が肌を包み込む放課後。
席を立ち、紫音と目が合い帰る合図。
「帰るか」
「うん。帰る…」
気まずい時間の始まり。
今のあたしには話すことよりも、手を繋ぐことで精一杯。
こんなに距離は近いのに、どこか遠く感じる。
紫音がすごく……遠い。
「…ねぇ、紫音?」
「ん?」
「やっぱりなんでもないです」
「なんだよ…。すげー気になる…」
「今日も暑いなぁ〜と思って‼︎」
なんて、笑って誤魔化した。
『別れる時がきたらどうする?』って、怖くて聞けなかった…。
「もうすぐ夏休みだもんな。今年の夏は暇だけど…どっか行くか?」
「紫音パパのとこ行かないの?」
「あぁ。知り合いの事務所から頼まれて、急遽夏だけ別なモデル使うって」
「それなら…暇だね〜…」
「そうだな〜。小遣い稼ぎも出来ねぇし」
デートの約束もあやふや。
結局、中途半端なまま。